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「……ったく。神原、後でジュース奢りだからな」
昭仁はぴくりと体を反応させ、ゆっくりと太郎を見上げる。
「覚えてたか……。わかったよ」
昭仁は、いそいそと自分の机に掛けてある黒い学生カバンを机の上に取り出し、中を漁り始める。
テストの結果、負けた方は勝った方にジュースを奢る。
二人の間で交わされたちっぽけな賭けだが、二人の成績は伯仲しているために、毎回かなりの好勝負を見せる。
昭仁が勝ったり、太郎が勝ったり。毎回大きな点差がつかないのが不思議な所だ。
「……あ。財布忘れた」
「なに!? 昼休みにパン食べてたじゃん」
昭仁の言葉に、太郎は目を見開いて抗議する。
「今日は家にあったのを適当に持ってきたんだよ」
昭仁はしまった。とばかりに右手を頭に乗せ、ため息を吐いた。
「すまん……」
「んーっ。……じゃあこれ貸しな! 俺は今から部活あるし」
それを聞いた太郎は、少し急いだ風にこの話題を片付ける。
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