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ガジナ。そう呼ばれた老人は、激しい創痍の体に渇を入れ、徐に立ち上がった。
「見て判らぬか、もう少しなら平気じゃ。……しかし、生き残ったのは、お前と少数の遣い魔か」
呵々、と笑うガジナ。しかし、彼の全身は朱に塗れ、女はそれを黙して見つめる。
「彼奴は強いぞ。……儂を含め、将軍格はほぼ半数、奴一人に倒されたからの」
女は、戦場になったであろう路地を見回してふと首を傾げた。
コンクリートで舗装された道は罅割れているものの、そこに並び立つ家屋には全くの被害がない。
つまり、ガジナと言う戦士が敗北するには、この場のダメージが割に合わないのだ。
「ふむ。不思議か? 彼奴は“絶対空間”と呼んでおったよ。別次元を作り出し、儂をそこへ引き込んだ」
「それでこの場の被害を最小に留めた……、か。……ふむ、なるほど」
女が腕を組み、考える姿勢をとると、ガジナは深く咳き込んだ。
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