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「……いや、魔力放出をな」  太郎の言葉を聞いた里緒は、太郎に平手打ちを与える。 「バカじゃないの!? 生身の人間に魔力の放出は、立派な攻撃よ!」 「俺はこうやって教わったんだぞ」 「私もそうよ! 力加減が全然違うでしょ!?」  体の動かない昭仁は、視界が揺れ、頭が霞みがかってゆくのをただ受け入れるしかなかった。 (う……)  内心うめき声をあげる昭仁。しかし、何か違和感を感じ取る。 (ん? 貴方は……誰?)  霧に包まれたような視界の中で、唯一、鮮明にくっきりと浮かび上がった人物像。  恐らくは老人だろう。オールバックの白髪に、黒いトレンチコート姿。  ただ立ち尽くし、話すことも、身動きすらもとらない。  いや、とれないのだろう。彼の体には、無数の傷が刻まれている。 (……おばけ?)  意識の外で二人の言い争いが続く中、昭仁はゆっくりと意識を失った。
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