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三人と別れ、昭仁はすっかり暗くなってしまった夜道を歩く。
「……ただいま」
いつものように玄関の扉を開け、昭仁は声を上げた。
「んー。おかえりー」
廊下の突き当たりにあるリビングから、凉が軽く顔を見せる。 昭仁が靴を脱いで家に上がると、凉は昭仁へ歩み寄った。
「お父さんは今日帰って来ないってさ」
「えっ、何で?」
「さあ? 会社に泊まるって言ってた」
二人が話しながらリビングに入ると、部屋中に淡いカレーの香りが漂っていた。
「おお、カレーか」
「うん、簡単だし」
昭仁は料理が出来ず、凉はその為か着々と日々実力を蓄えている。頭が上がらなくなる日もそう遠くはないだろう。
「いつ食べる?」
「もう食べるよ。ちょっと着替えてくる」
そう言ってリビングを出ると、自室へと戻った昭仁。
部屋のドアを開け、ブレザーをクローゼットのハンガーに掛ける。
「……」
昭仁は徐に自分の右掌を見つめた。
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