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「……いや、時間勘違いした」
「何? おっちょこちょいめ」
溜め息を吐きながら自分の席に座る昭仁。
それを見た太郎は、何かを感じ取ったようだ。
「……何かあっただろ」
「……」
「水臭ぇぞ」
太郎の言葉に、昭仁はもう一度溜め息を吐いた。
「……松井が魔法使えてた」
「は? 早くね?」
「うん……」
「で? 何が気に食わないんだよ」
昭仁は太郎と目を合わさず、前だけを見つめている。
「思えば、あいつに勝った事無いなぁって思ったんだ」
それを聞いた太郎は、口端を吊り上げた。
「ははーん。才能の差を見せ付けられて、ショック受けてんのか」
「うん。魔法なら、って思ったんだけどな」
「諦めんなって、俺が教えてやるからよ」
太郎がそう言うと、昭仁はようやく太郎に目を合わせた。
「昨日みたいなの?」
「ち、違ぇよ……」
「冗談だよ」
昭仁の顔には笑顔が戻っていた。
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