789人が本棚に入れています
本棚に追加
これは昭仁が中学時代、剣道をやっていた事から来たものであり、随分と手慣れた一連の動作だった。
昭仁は目を瞑り、背筋はピンと伸ばす。
昨日の感覚を追い求め、ただその一点に集中する。
「……」
太郎は黙って見守るのみで、一切口を挟まない。
「……っ」
昭仁の体がぴくりと動く。早速、昨日の感覚が蘇り始めたのだ。
昭仁はゆっくりと目を開き、感覚を逃がさないよう気を配りながら、右手を胸の高さまで持ち上げて見つめる。
「……今なら、出来るかも」
「え、本当か? じゃあ、火が一番簡単だ。魔力を、燃やすようなイメージを浮かべろ」
「……ん」
昭仁は落ち着いた様子で、且つ緊張を解かぬよう、真剣な表情を浮かべる。
右手からも魔力を感じ取る事は出来た。
じっくりと手の先を見つめ、掌の上にある虚空の魔力を消費し、点火するイメージ。
「……ん」
昭仁が声を漏らした途端、その空間から火花が散り、小さな炎が灯る。
最初のコメントを投稿しよう!