第一章:種

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「いっせぇーのっ」  横長の長方形で、コンクリート造りの大きな白い校舎、その数あるうち、2-3と書かれたプレートの掛けてある教室の中。白いパネルの床に学習机が並んでいる。  紺のブレザーに灰色のスラックスを身に付けた、共に長身の男子二人組が窓際で向かい合っている。  二人はそれぞれに一枚ずつプリントを握りしめ、放課後、人もまばらになった教室の空気を緊張させた。 「せっ!」  掛け声と共に二人は、手のプリントを勢い良く胸の高さに寄せ合い、そして肩を寄せて横並びになり、互いの内容を目で追って確認する。 「740……、732……」  1人は神原 昭仁(かんばら あきひと)と言う名の黒い短髪の男。利発そうな顔を緊張の面持ちに歪めている。 「あぶね……、八点差か」  もう一人は峰 太郎(みね たろう)。少し長めの黒髪をワックスで丁寧に整えており、顎には無精髭を蓄えている。
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