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太郎は小さく息を漏らすと、左手に握り拳を作った。
「よし! 今回は俺の勝ちだな!」
「あと八点かよ。……くそ」
二人の手にしていたプリントは、一学期中間テスト九教科の結果が記してあるものだった。
結果は太郎の勝利。昭仁はがっくりと肩を落とし、顔を俯かせる。
すると一人の女子生徒が、二人の目の前に現れた。
「……二人共? どうだった?」
彼女は松井 愛子(まつい あいこ)。小柄な体型で、肩まであるウェーブがかった黒髪と、縁なしの薄い眼鏡を掛けているのが特徴的だ。
「おお松井、俺が勝ったぜ!」
太郎が愛子に大袈裟なガッツポーズをとって見せると、彼女は小さく微笑んだ。
「今回は峰君なんだ。一年生の時は神原君が勝ち越したんだよね?」
「おう、あん時は二勝三敗だったからな。今年は幸先良いぜ」
大きく笑う太郎をよそに、昭仁は小さく唇を尖らせた。
「神原君、……今度私が勉強教えようか?」
愛子は微笑みながら、右手を自分の胸に添えた。
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