789人が本棚に入れています
本棚に追加
「おいおい、そりゃあ反則だろうよ」
太郎はやれやれ、といった様子で溜め息を吐いた。
「誰のせいで俺らがクラスの二、三を争わなきゃいけないと思ってんだ?」
昭仁、太郎にとって愛子は届かぬ壁。高校入学から一度も成績を抜いた事は無い。
しかし、両名共に学年順位は優れているため、彼らが悪い訳ではない。
ただ単純に、愛子の頭脳が二人を上回っているだけなのだ。
「お前のせいじゃ!」
太郎は右手で愛子の眉間あたりを指差した。
その言葉を聞いた愛子は、一瞬ムッとした表情の後、やけになったかのように太郎に食らいかかった。
「……峰君が頭悪いからだよっ!」
「あっ! てめ、この」
太郎は即座に愛子の頭を右腕で抱え込み、頭頂部に左拳を押し付けた。
「痛い! 痛いよ」
「今の悪口は神原にも言ったことになるからな!」
「いーたーいー!」
ところが、やり取りを続ける二人に悪意は微塵も無く、その有様を昭仁は微笑ましく眺めていた。
最初のコメントを投稿しよう!