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都内某ライブハウス。
観客席とステージの間には物騒な鉄条網が張られてある。
さもあらん。
観客は物騒な連中ばかりであったからだ。
「エス!エス!エス!エス!」
中指を立てながら主役の名前を連呼する観客。
そしてステージには、ターミネーターの如き格好をした筋肉質の男が現われた。
ワックスでオールバックにしたサングラスをかけた無表情の男。
彼の名は呪神。
世を忍ぶ仮の姿では呪(のろい)と名乗っている。
当主の忠実な側近である彼のこの地に於ける役割はドラマー兼マネージャーだった。
ドラムの前におもむろに腰を下ろし、黙々とリズムを刻み始める。
そのドラミングはパワフル且つ精確無比。
そしてその扇情的なビートが観客をヒートアップさせる。
「呪さんの刻むビートはすげえぜ!」
「腰に来るんだよな!まるで射精する時のビクンビクンって感じを思い出すぜ!」
股ぐらをいきり立たせながら口々に呪のドラミングを褒めたたえる観客。
当の呪は我関せずと言わんばかりに黙々とリズムを刻み、当主の登場を待っている。
少し表情に照れが入ってるのは彼の本来の性格であろうか。
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