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「いやほんと、俺死んでるんだって」
「…………」
「なんだその顔、そしてその沈黙は! まさか……いや、流石にないとは思うが……でも万が一の可能性をあえてここで指摘するならば、お前まさか信じてないのか! この俺が生きてるとか、とんでもない勘違いをしているんじゃないだろうな! 感じろよ、この生気の無さを。 というかむしろ感じられないだろ生気、だって生きてないもん俺! 逆に聞くけどさ、俺のどこが死んでないっていうんだよ、言ってみろ三分待ってやる、はい三分経った! あ、ちょっとやめっ、南無阿弥陀仏とかいっちゃ駄目だって、死ぬって、いや死んでるんだけど死ぬって、成仏するって! ……ふう、さて……おわかりいただけただろうか。 南無阿弥陀仏という言葉に反応し、まるで幽霊のように、そうまるで幽霊のように苦しむ様を。 おい、大事なことだから二回も言ったのになんだその顔は! 何、演技くさい? お前さっきから失礼だぞ、親しき仲にも礼儀ありっつって……あっ、親しき仲にも霊気ありっつって、どうだ今上手い事言っただろ俺、なぁなぁ。 寒い……だと……!? そ、そそ、そりゃお前、幽霊の近くにいたら寒いだろ、常識だぜこんなの、幽霊界の常識だぜ、お前知らないとかないわそれ。 ……まだ足りんのか、こんなにも幽霊っぽい発言とかしてるのに、まだ信じられないのかお前は! 仕方ない……とっておきを見せてやる、あ、あんたに絶対信じさせてやるんだからねっ……! え、これ最近流行のツンデレってやつじゃないの、違うの? ……仕切り直しだ、ごほん、あー、あー、よし……俺が幽霊だと信じていなかった事を後悔させてやるぜ!」
カギ括弧でくくられている事を忘れてしまいそうになる程長く、そして熱く語った自称幽霊のおっさんは、僕の手を掴み上げ、ぐっと引っ張り、なんのためらいも無く自らの腹部に――入れた。
にゅるりと、するりと。
僕の手が、おっさんの腹の中に吸い込まれる。
文面でも気持ち悪いのに、実際映像で見ると尋常じゃなく気持ち悪い。
だから、その結果として僕は――。
「ひっ、ひぎゃぁああああああああ!!」
と、なんとも情けない、漫画やアニメのようなベタな悲鳴をあげていた。
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