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「気持ちわるっ、え、何これ気持ちわる!」
「どうだ、お前の手が俺の腹の中に入ってんだぞ、これでもまだ疑うか!」
「あんたの神経を疑わざるを得ない!」
悲鳴を上げた後、少し冷静になって再び男の腹部に目をやったところ、状況は何も変わっていなかった、見間違いなんかじゃなかった。
繰り返し言うが、僕の手が、おっさんの腹に入っている。
入っているとしか言いようがない。
手首から先が、腹部に飲み込まれている――即ち、おっさんの内臓触りたい放題。
いや、触りたくもないんだけど……それ以前の問題として、何も触れなかった。
おっさんの腹の中に手を入れられている感触が、一切無い。
ただ、腕を突き出しているだけの状態。
まるで、おっさんの体をすり抜けているような――。
「ほら、お前は俺に触れないだろ、触ろうとしてもすり抜けるだろ!? それは何故か……聞きたいか、聞きたいんだな! そうかそうか、どうしても聞きたいと言うのならしょうがない……それは、この俺が幽霊だからだ!」
「そ、そんな馬鹿な話があってたまるか! 日曜日の真昼間から太陽の光を思いっきり浴びてるし、全然透けてないし、足はついてるし、しかも物凄いアクティブに話しかけてくるおっさんが、幽霊だなんて信じられるわけないだろ!」
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