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「お、おっさん、一体何が目的だ!」
「何が目的って……別に俺は――」
「わかってる、わかってるんだよ! あれだろ、僕に幽霊だって信じさせて、あなたは幽霊に近寄られやすい体質ですねー、でも安心、このパワーストーンを身につけなさい、そうすれば幽霊はあなたに近づくことができなくなりますよ、お値段十万円になります、的な展開にもち込む気だろ!」
「おしい、十万じゃなくて二十万だ」
「ひいぃぃっ!」
「冗談だ」
おじさんはそう言って、がははと豪快に笑ってみせるが、僕は笑えるような気分ではなかった。
冗談とか言ってるけど、そんなの信用して油断しちゃ駄目だ――何しろ十万円どころか二十万円の危機なのだ。
なんとかおっさんが幽霊である事を否定しないと、上手く言いくるめられて二十万ぼったくられる。
この歳で二十万円なんて大金用意できない……考えろ、こんな人間臭いおっさんが幽霊なわけないんだ、どこかに否定できる要素がある筈。
手がおっさんの体に入る瞬間をこの目で見ている時点で、否定も何もあったもんじゃない気もするが、思考停止は敗北だ、必死に考える。
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