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だからその絵ハガキの隅の方に『スイス:ラヴォー地方のブドウ段々畑』と書いてなければ、瑞希はそれがスイスの風景だということすら知らずにいただろう。
瑞希はその絵ハガキをとても大事にしていた。
だが2年前の春に絵ハガキが送られてきた時の鮮やかな感情も、今は薄い氷の膜が張った水面の下に閉じ込められていた。
そのせいか今、久しぶりにその絵ハガキを目にしても、特に何も感じなかった。
そこにはただ、スイスの山裾に佇む湖と枯れたブドウの段々畑があるだけだった。
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