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――電車を降りるとやけに空は曇っていた。
雨は来ないだろうか、傘は持ってきた方が良かったな…私は軽い後悔を覚えて色褪せたベンチに座った。
この無人駅、木造なのだがかなり老朽化していて、台風でも来たら跡形も無くなるだろう。
今から五分は早いのか?こんな場所で待っていると世界の果てに来た気分だ。早く帰って恋人に会いたい、愛しいあの娘に…
その時、背後で大きな爆発音がした。音自体は遠かったのだが、爆発の振動で駅全体が揺れた。
何だ、一体何が…
不意に立ち上がった時、頭上を大きな飛行機が飛び去った。まるで軍事用の飛行機で、ごついエンジン音と共に強い風が吹いた。
私は急いで近くの集落を見る。
大きな煙が上がり、集落は燃えていた。人の悲鳴が耳を霞める。そしてその直後、いくつか銃声がした。
思わず鼓動が高鳴る。胸を圧迫される様な緊張感に私は吐き気を覚えた。
この辺りは戦闘区域なのか?だったらなぜ電車は走っていたんだ?この後、乗り換えの電車は来るのか?
混乱が止まらなくなり、頭を抱える。
そうしているうちにも銃声は近くなる一方だった。マシンガン、ライフル…考えるだけで恐ろしい。
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