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「あなたは…どうして…っ」
銃口を明智に向けたまま、濃姫は叫ぶ。
光秀はニヤリと笑い、月を背負って高笑いをした。
「帰蝶、今宵の月はとても綺麗じゃありませんか」
「その名前で呼ばないで頂戴…!今後一切!あなたは私の名を口にしないで…!」
「ほう?それはどうしてですか、帰蝶?」
「………っ」
「いい顔ですよ、帰蝶」
今、この人に何を言っても無駄なのか。そう自分を納得させようとするが濃姫の顔は激しく歪む。
銃口を向けた手はもう震えてなどいなかった。
そう、冷静にならなければいけない。
感情のみで動いてしまえば後悔しか残らないに違いない…。
「上様の配下であり、上様の手足になる。それだけでは不足だったというの?あなたもまた、天下を…」
濃姫が最後まで言い終わらないうちに光秀はまた高笑いをした。
濃姫はバカにされた気がしたのか舌打ちをする。
「何を仰っているのですか?信長公の手足である私だからこそ。手足である私だけが…っ!あのお方の首を取ることができるのです。」
「…おかしいわよ、そんなの!!」
駄目だ。興奮しては…
そう言い聞かせるのだがまた銃口を持つ手が震えだしてしまう。
このままだと決着が付かない。いや、つくだろう…私の死によって。
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