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ふわり、と優しい風が青々とした大地を撫でていく。
辺りは鳥の鳴き声と木々の擦れる音が支配し、葉は降り注ぐ太陽の光を細切れにして大地に落とす。
背の低い草木には数多の水滴がまとわりついており、光を受けて宝石のように輝いて辺りに幻想的な雰囲気を醸し出していた。
「ぉ……ぃ……」
その自然の音から外れて、幼い声が小さく響くがまた聞こえなくなってしまう。
すると一粒の水滴が地面に落ちて弾け、複数の小さな水滴が花の花弁のように咲いた。
弾けた水達は木々の間から零れる太陽の光によって、七色に別れて煌めく。
そしてまた水滴は一定のリズムでまた落ちて弾け、虹色の花を咲かせ続ける。
と、強めの風に運ばれ、一粒だけ地面に落ちるより早く弾けてしまった。
水滴が他より早く弾けた場所……それは仰向けに倒れた少年の頬。
「う……むぅ……」
少年は頬に落ちた水に反応して目を覚ます。
ぱちぱちと何度かまばたきすると、上半身を起こして寝起き特有のぼんやりとした意識の中で辺りを見回した。
少年はまるで女の子のように華奢な身体つきで、蜂蜜に浸けたような金色の髪は肩まで伸びている。
瞳は寝起き故かぼんやりとしているが、鋭い藍色をしていた。
「やっと起きた!」
「ッ!?」
突然後ろから聞こえてきた声に驚き、少年は身体をびくつかせる。
慌てて振り向くと、そこには小さな男の子が立っていた。
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