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架月はタバコに火を付け深くため息をついた。
葉子は言った。
「諦めんじゃないよ。必ず見つかるから…。」
そういって軽く架月の頭を撫でた。
「……今でもあの人は生きてる気がするの……。」
「生きてるわよきっと。幸せになってほしい、僕の過去を引きずらないでって…。もっと正直になりなさい。意地ばっかり張ってないで。」
「……葉子先生、お願いがあるんですけど……。」
「カズちゃんのお願いごとならなんでも聞く!」
数週間僕は渋谷先輩の家で井上先生の感応小説の編集を手伝った。その間僕は先生の小説に一切手をつけることはなかった…。きっと山住何だろうな……。どうしよう…。編集長にも怒られる…。
「よーし、おわったぞ!伊藤ちゃん帰っていいよ。」
「…はい…。」
僕は折れた。疲れのせいで何もかもがどうでもよくなってしまったのだ。先生に付き人として、彼氏として認められなくなったら荷物運んで元居たアパートに帰ろう。僕はそんな事考えていた。
マンションに戻るといい匂いがした。
「伊藤ちゃんお帰りなさい。」
「た、ただいま…。えっとなんで井上先生がいるんですか??」
「しー!中入ってみて。」
僕は恐る恐る中へ入るとそこには先生がソファ寝ている姿と僕のワープロがあった!
まさか!?
僕は急いで電源を入れ先生の小説が入ってるファイルを開くとそこにはちゃんと編集されていた。先生が!?
「徹夜続きで栄養あるもの食べさせね。」
井上先生はそう言うとひっそりとマンションから出て行った。
先生…。なんで気付かなかったんだろう…。こういう一面もあること…。先生は繊細で知的的なところがありここぞっというときに助けてくれる優しい人だってこと。
先生の寝顔見て僕は思った。
睫毛ながい…。可愛い寝顔…。誰にも見せたくない…。僕だけのもにしたい…。
僕は急いで編集部に向かい、ギリギリで編集に間に合った。そして急いで買い物に行った。力がつくもの食べさせないと…。今晩はシャケ雑炊にしよう!
マンションに戻った時には先生はタバコを吹かしていた。
「…先生…今帰りました。」
「お腹空いた…。」
「急いで準備します!!」
いつもの先生だ…。
そんないつもの日常がまた始まった秋。
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