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――帝都王城、謁見の間。
厳粛な空気の漂う、王城の中心。
寸分のズレもなく敷かれた赤のカーペットは、正面の大扉から少し行ったところにある階段まで一直線に続いている。
両側の壁には盾に剣、槍に斧など、あらゆる武器が等間隔で飾られている。
そして階段の上に位置する玉座に、この国の王は鎮座していた。
階段の下には、この国の王子であるマルク。
さらに、その傍らには護衛の騎士としてアマリアが立っている。
「――父上。北方の例の集落の制圧、この僕に任せていただけませんか?」
「……出来るのか?」
「ええ。帝王たる父上の名に懸け、見事一人残らず討ち取ってご覧に入れます」
静かに笑うマルク。
「…………?お待ちください、皇子。
たしか、あの集落には非戦闘民しか居なかったはずですが……」
「黙れ。たかが隊長の騎士が、この僕に意見をするな!」
制止する手を払いのけ、マルクが一歩前に出る。
だが、アマリアとてここで食い下がる訳にはいかない。
「ですが……!」
「ええいうるさい!
貴様、異端者共を逃した失態……まさか忘れた訳じゃあるまいな!?」
「――――ッ!」
実際のところ、異端者を逃したという件で罰せられなかったのは姫であるアリシアによる計らいだが、皇子であるマルクはそれを直ぐ様にでも撤回出来る。
つまり、これ以上彼に歯向かえば…待つのは“死”。
アマリアは悔しさを噛み締め、一歩後ろへ下がった。
王は黙して、ただその様子を見ているのみ。
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