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『くっ!………瑠璃…』
『ボ…父さん!!』
顔を歪め、苦しそうに寝込む壮年の男。その傍らには心配そうに男を看るまだ幼さの残る少女。
二人はボロボロの身なりで男のほうは、大怪我をしているようだ。
『…瑠璃……俺はもう長くない。俺のことはいいから早く行け!!』
『な…なに弱気になってるの!!いつもの勝ち気な父さんはどこに行ったのよ!?』
『……自分の体のことは自分が一番分かっている。もう……俺にはこれ以上生きられる力はないんだよ……う"っ!』
『っ、父さん――!!』
男が力尽きたと同時に悲痛な少女の叫び声が木霊する。
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「う゛………うーん」
朝早く、まだ薄暗い森の中。
そのどこからか、小さな声が聞こえてきた。
「………懐かしいな…。あの時の夢を見るなんて、さ。…さぁてと、早く次に進まなきゃ、ね!!」
少し寂しそうな声がした後、ガサガサッという木々の擦れる音がしたかと思うと、その森で一番と言っていい程大きな木から人影が飛び降りてきた。
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