それでも僕らは

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兄貴が悪魔と取引をした。 僕を生き返らせる為に余命1年になってしまった。 なんて事をしてくれたんだ。 僕の気持ちはいつも置いてけぼり。 きっと隣でご機嫌にハンドルを握る彼は知らないだろう。 騒がしいメタリカがインパラを揺らす。 足元からはエンジンの揺れも伝わってくる。 慣れ親しんだオーデコロン。 嗚呼、彼も僕も生きている。 そして、 「ディーン。」 「どうした、サミーちゃん。おっぱいが恋しいか?ん?それともさっき俺がフライドチキン2つ食ったのまだ怒ってんのか?」 「そうじゃない。何で兄貴、そんな風に…!」 何事もなかったように。 「…サム。俺は後悔してない。可愛い弟だ。当然だろ?まだこういう時間を楽しみたいんだ。」 「……わかってる。」 いつも憎まれ口を叩く彼はじっと僕の方を見て声色を落とす。 いつの間にか道路の脇に車を一旦停車させていた。 擦れ違う車のライトが一瞬だけ僕らを照らす。
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