898人が本棚に入れています
本棚に追加
「彼女は妄想癖が激しい。ああなっては手はつけられん」
「そんな…音無さんがいないと…」
「うむ、大変だ。実に大変だ。わっはっは」
「笑い事じゃないですよ!」
俺が突っ込むと社長の表情が引き締まった。
「ただ、一つだけ彼女をこの世界に戻す方法がある」
「…えらくファンタジーな言い方しますね…で、その方法って?」
「うむ。…ある言葉を音無君の耳に囁けば良い」
「…じゃあ社長が囁いてくださいよ。俺かなり嫌な予感がします」
「元はと言えば君のせいではないか。何、簡単な事だ」
「さっきは褒めてくれたじゃないですか…」
「細かいことは気にしてはいかんぞ、君」
「解りましたよ…じゃあ何て言えば良いんですか?」
「うむ。それは……だ」
「…無理で」
「良いからやりたまえ」
「…」
俺は社長から聞いた言葉の真意を問い詰めながら音無さんに近づく。
「…フフフ…春香ちゃんがそこで下着を…」
「…社長、本当にこの音無さんはこれを囁けば戻ってくるんですよね?」
「うむ」
…言うしかないか。
「失礼します、音無さん」
俺は音無さんの耳へと言葉を発する。
「年増」
最初のコメントを投稿しよう!