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「プ、プロデューサーさん、この部屋私が使って良いんですか?」
「ああ。まだ売れてないからこんな所しか予約できないけど…な」
「あはは…よし、頑張らなくっちゃ!」
「ああ、頑張れよ。俺は挨拶した後に、軽くここをぐるって一回りしてくるから」
「はい!お互いに頑張りましょうね!」
「ああ」
春香がそう言ってマイクを握り、歌い始めたのを確認して俺は部屋を出た。
周りの部屋からもアイドルの卵であろう少女達が歌っている声が聞こえる。
…戦いはここから始まってるんだよな。
俺はいつの間にかそんな事を考えていた自分に失笑した。
…やる気じゃん、俺。
そんなことを考えながら、ある部屋の前を通ろうとしたときに、周りの歌の一つが聞こえてきた。
「蒼い鳥~もし幸せ~♪」
…透き通っている様な美しい声。
チラリと部屋を見れば春香と変わらないであろう年齢の少女が懸命に歌っていた。
「…!」
ふとガラス越しに目があった。
すると少女は歌うのを止め、扉を開けた。
「あの、何か御用でしょうか?」
「あ、いや…歌上手いなあ…って思って、ふと聞いてたんだ。邪魔してごめんね?」
俺がそう言うと少女はフフっと微笑んだ。
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