898人が本棚に入れています
本棚に追加
「…わざわざ聞いていたのですか?」
「…うん、綺麗な声してたし、つい聞き入っちゃったよ」
「そうですか…」
少女は視線を俺から外した。
「…人間はすぐに嘘をつき、私を裏切ります。少なくとも私はそう思っていますから。でも、歌だけは私と、ずっと一緒に居てくれるんです」
少女はそう言って俺を見つめる。
「小さい頃から…ずっと歌ってたの?」
「はい。私は小さい頃からずっと歌が好きでしたから。一人だった私は楽しい時も悲しい時も…私は歌っていましたから」
「…歌うのが好きなんだね?」
少女は頷く。
「私とずっと共に生きてきたのが「歌」ですから」
「…つまり、小さい頃から練習してたって事かな?」
「まあ…そうなりますね。歌、聞いてくださって有難うございました」
少女はそう言うと頭を下げる。
「あ、いやいやコチラこそ邪魔してごめんね?」
「お気になさらず。ではこれで失礼致します」
少女はそう言って去っていった。
最初のコメントを投稿しよう!