レッスンにて。

10/11
前へ
/653ページ
次へ
「…わざわざ聞いていたのですか?」 「…うん、綺麗な声してたし、つい聞き入っちゃったよ」 「そうですか…」 少女は視線を俺から外した。 「…人間はすぐに嘘をつき、私を裏切ります。少なくとも私はそう思っていますから。でも、歌だけは私と、ずっと一緒に居てくれるんです」 少女はそう言って俺を見つめる。 「小さい頃から…ずっと歌ってたの?」 「はい。私は小さい頃からずっと歌が好きでしたから。一人だった私は楽しい時も悲しい時も…私は歌っていましたから」 「…歌うのが好きなんだね?」 少女は頷く。 「私とずっと共に生きてきたのが「歌」ですから」 「…つまり、小さい頃から練習してたって事かな?」 「まあ…そうなりますね。歌、聞いてくださって有難うございました」 少女はそう言うと頭を下げる。 「あ、いやいやコチラこそ邪魔してごめんね?」 「お気になさらず。ではこれで失礼致します」 少女はそう言って去っていった。
/653ページ

最初のコメントを投稿しよう!

898人が本棚に入れています
本棚に追加