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「ん…」
久しぶりのスーツをなんとか着こなし、髪も整える。
…よし。こんな感じで良いだろう。
俺は念のために保険証や履歴書を持ち、家を出た。
…一体どんな仕事なのだろうか…と歩きながらふと考えてみる。
昨日、この紙を貰った社長が自ら赴く程に余裕が無いところなのだろうか。
確かに面接もせずにいきなり
「ティンと来たぁ!」
とか言われて採用されても…なあ。
他の人に対してもそうなのだろうか?
まあ怪しい仕事なら辞めたら良いだけだしな。
とにかく高卒の俺にせっかくのチャンスだ。
頑張らなくちゃ。
~
さて。
地図によればこの辺りと書かれているが…この辺りって会社とかあんのかなあ…?
交差点から外れ、路地裏とは言わなくとも地味な所に間違いは無かった。
「ったく…会社名ぐらい言っといてくれよな…」
訊いていなかった自分のせいだと解りながらも悪態をつく。
立ち止まってため息をついていると後ろからいきなり何かとぶつかった。
「わ!」
「きゃっ!…あ、すみません…失礼しますね!」
見る限り高校生くらいの可愛げな少女が一礼して駆け抜けていく。
何だ…?
かなり急いでたな…ん?
なんか落ちてる…これは…財布!?
今の女の子のかな!?
俺は拾い、彼女が駆けていった道を走るのだった。
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