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「…千早ちゃん、君はなんでそこまで人を嫌うのかな?」
気づけばそんな事を言っていた。
千早ちゃんは俯く。
「…私には歌があれば構いませんから。友人なんて…家族なんて…」
千早ちゃんはそう言ってプルプルと震え始めた。
聞かない方が良いと、本能で解ったのだが俺は止まらなかった。
「…訳を聞かせてくれないかな…?」
「…」
千早ちゃんは小さく頷いた。
「私の両親は昔から仲が悪いんです。口論は日常茶飯事、酷いときは父が母を殴ったり…私もよく邪魔者扱いされました」
…そんな事が。
「でも、私には弟がいました。年もそんなに変わらず、両親の仲が悪いのでいつも私は弟と一緒に居ました」
千早ちゃんがすぅ…と息を吸った。
「私達は寂しかったんです。日曜日でも家は荒れる一方。私達に居場所はありませんでした」
俺は聞きながら千早ちゃんを見守る。
「…あの頃からなんですよ。私…いや、私達が歌を好きだったのは。良く河原や公園で歌ったりしてたんです」
…春香もそうだった。
「それで、私と弟がいつも歌っていたのが、この「蒼い鳥」なんです」
先程歌っていた「蒼い鳥」が…。
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