初オーディション。

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「家庭の雰囲気は決して良くないけど、幸せの蒼い鳥なら、きっと家族を幸せに出来るよ…っと弟が良く言っていました。でも…弟は…」 そこまで言うと千早ちゃんの瞳から一粒、また一粒と涙が滴った。 そこから先はもう言わなくとも…いや、言えぬだろう、俺はそう確信した。 「千早ちゃん…辛かったんだね」 優しく頭を撫でてあげる。 千早ちゃんはグスッ…グスッ…と小さな嗚咽を漏らす。 俺は小さな彼女の身体を包み込む様に抱き締めた。 「…ぁ…!」 千早ちゃんが小さく声をあげた。 「…大丈夫だよ、千早ちゃん」 根拠はない。 口からの出任せと言われれば終わりだ。 でも、俺は心からそう思った。 優しく、優しく頭を撫でる。 ゆっくりと、丁寧に。 次第にだが彼女の身体は落ち着きを取り戻した様だった。 「…有難うございました、もう大丈夫です」 千早ちゃんがそう言って恥ずかしげに俺から離れた。 「あ…うん…ごめんね、変なこと思いださせて」 「いえ。構いません。…逆に、歌わなければならない…と言う意志が強くなりました」 …この子はマジで凄えよ。
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