898人が本棚に入れています
本棚に追加
「家庭の雰囲気は決して良くないけど、幸せの蒼い鳥なら、きっと家族を幸せに出来るよ…っと弟が良く言っていました。でも…弟は…」
そこまで言うと千早ちゃんの瞳から一粒、また一粒と涙が滴った。
そこから先はもう言わなくとも…いや、言えぬだろう、俺はそう確信した。
「千早ちゃん…辛かったんだね」
優しく頭を撫でてあげる。
千早ちゃんはグスッ…グスッ…と小さな嗚咽を漏らす。
俺は小さな彼女の身体を包み込む様に抱き締めた。
「…ぁ…!」
千早ちゃんが小さく声をあげた。
「…大丈夫だよ、千早ちゃん」
根拠はない。
口からの出任せと言われれば終わりだ。
でも、俺は心からそう思った。
優しく、優しく頭を撫でる。
ゆっくりと、丁寧に。
次第にだが彼女の身体は落ち着きを取り戻した様だった。
「…有難うございました、もう大丈夫です」
千早ちゃんがそう言って恥ずかしげに俺から離れた。
「あ…うん…ごめんね、変なこと思いださせて」
「いえ。構いません。…逆に、歌わなければならない…と言う意志が強くなりました」
…この子はマジで凄えよ。
最初のコメントを投稿しよう!