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弱った表情ながらも俺の方を真っ直ぐに見据える春香。
俺が「なっ?」っと相槌を求めると「はい…!」と頷いてくれた。
無責任な言葉だって言うのは解ってる。
でも今の春香を放っておく気なんてさらさら無かった。
「…次は81番から90番の方、どうぞ」
来た。
俺は最後に笑顔で春香を送り出してやった。
「頑張れよ、春香!」
「はい!」
「では83番の方、お願いします」
暮花さんの落ち着いた声が春香に届く。
春香は練習用のステージでだが的確に返事をしていた。
そして春香は歌う。
「太陽のジェラシー」と言う幸せなカップルの歌であったのだが、曲の雰囲気通り、そしていつも通りに、春香は元気良く…そして笑顔で歌って、踊っていた。
直前の励ましが効いたのだろうか。
俺はそんな春香を眺めながら、改めて自分の重大さに気づいたのだった。
「これより、審査結果を発表します」
歌が終わり、暮花さんは丁寧に言う。
「このオーディションでの配点は各10点の30点満点。そして合計点が20点以上なら天海さん、貴方は合格よ」
「はい…」
春香が頷く。
すると暮花さんは微笑んだ。
「まずは私だけど。天海さん、貴方明るくて良かったわよ、8点ね」
「あ、有難うございます!」
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