ヒミツの恋

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声のする方向を振りかえると奥村くんがいた。 「泣いてるのか?」 そう言うと奥村くんは段々と私に近づいてきた。 奥村くんの問いかけに、何か言葉を発したいのに言葉が出てこない。 「アイツの…… アイツのせいか?」 えっ? アイツって……何? 「弟。晴季だっけ? アイツのせいだろ?」 何言ってるの? 意味が分からないよ。 もしかして知ってるの? 「好きなんだろ? 弟のこと好きだから、泣いてるんだろ?」 「どうして……?」 やっと出てきた言葉がこの一言だった。 どうしよ、どうしよう。 知られちゃったよ。 どうすればいいの? 「分かるよ。いつも俺お前のこと見てたし」 「えっ?」 どういう意味? 「好きなコが誰を好きかなんて、知りたくなくても分かっちゃうもんなんだ」 好きなコ? 奥村くん私を好きなの? 今までそんな素振り全然見せなかったのに。 「篠原のことが好きなんだ。 篠原が俺のこと友達としか思ってないことは分かってる。 今まではそれでいいと思ってた。 でも篠原泣いているから…… 俺ほっとけねぇよ」 「奥村くん……」 「いくら好きでも弟なんて…… すぐに忘れろなんて言わない。 俺のこと利用していいから……」 そう言うと奥村くんは私のことを抱きしめた。 「嫌ならふり払って逃げろよ」 いいのかな? 本当にいいのかな? 利用するなんて…… でも……もう限界だよ。 「逃げないってことは肯定ととっていいのか?」 私は返事をする代わりにコクリと頷いた。 ねぇお母さん? これでいいんだよね? これできっとハルへの想いも忘れられる。 ごめんね奥村くん。 こんなこと本当はしちゃいけないよね? でも…… 一人は寂しいよ。
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