ヒミツの恋

13/16
前へ
/18ページ
次へ
ある日私が家に帰ると、ちょうど荷物を取りに来ていたハルがいた。 「ハル……」 ハルは一瞬チラッと私の方を見たけど、そのまま私の横を通り過ぎていった。 「ハルッ!!」 私はもう一度、今度はさっきよりも大きな声でハルを呼んだ。 「何?」 ハルは立ち止まると、今まで見たことのない冷たい視線と声を私に向けた。 なんでそんな顔するの? 「どうして……どうして家に帰ってこないの? お父さんも……私も心配しているんだよ?」 「別に関係ないだろ」 関係って…… 「なんでそんなこと言うの? 私達……私達は家族なんだよ? 心配するのは当たり前でしょ?」 あんなに嫌だった家族という言葉を自分で使っている。 でも今私はこんな言葉でしかハルのことを引き止められないから。 「家族って…… 別に家族だからって関係ないだろ? あんたはアイツと仲良くやってればいいだろ? 俺に構うな!!」 ヤダ、ヤダよ。 「関係ないなんて言わないで。 構うななんて言わないで。 あんたなんて……言わないでよ」 悲しかった。 凄く悲しかった。 お姉ちゃんであることが辛かったはずなのに。 ハルにあんたなんて、他人みたく言われたことが何よりも辛かった。 「ミウ姉?」 いきなり私が泣き出したことに、ハルが困惑しているのが分かる。 でももうとまらない。 「ハルゥ……好きなの…… ハルのことが好きなの……」 「えっ?」 「ごめんね。 お姉ちゃんなのに、ごめんねっ? ちゃんと、ちゃんと忘れるから。 お願いだから側にいて。 家族でいいから…… 離れていかないでよ」 最後の方はほとんど声になっていなかったと思う。 こんなこと言ってどうするんだろ? こんなこと言って…… 軽蔑されちゃうかも。 こんなやつと姉弟なんて気持ち悪いって思われちゃうかも。 もう二度と目も合わせてくれないかも。 姉弟に戻れなくなっちゃうかもしれないのに。 本当馬鹿みたい。 っと思った瞬間 ハルが私のことをギューッと力強く抱きしめた。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

41人が本棚に入れています
本棚に追加