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「ふーん。篠原の弟だけど俺はなんか気に入らねぇな」
「奥村くん……」
滅多に人のことを悪く言わない奥村くんが、そんな風に言うなんて凄く意外だった。
なんだかその場の空気が一瞬変わった気がした。
「あのっ「えー!章悟はただ単に晴季くんが自分よりイケメンだから嫉妬しているだけでしょ!」
「なっ!!」
私が言葉を発しようとした瞬間、絵里が私の言葉を遮り話しだした。
「ほらやっぱりぃ~男の嫉妬は醜いよ章悟くん!!」
絵里が奥村くんのことをからかったことにより、淀んだ空気が少しだけ和んだ。
天然か計算か分からないけど正直ありがたかった。
いくら奥村くんとは言え、ハルのことを悪く言われるのは我慢ならなかったから。
あのままだったら奥村くんに酷い言葉を浴びせてしまっていたかもしれない。
絵里に感謝しなきゃ。
「篠原、悪かったな?」
「えっ?」
いきなりなんだろ?
「いや、あの……身内を悪く言われるのってやっぱ気分悪いよな。ごめん」
「いいの、気にないで。それに誤解しないで欲しいの。ハルは本当は誰よりも優しくて良い子なの」
「そっか。篠原が言うなら間違いねぇな」
「うん」
良かった。
ハルが誤解されたままなんて絶対嫌だもん。
「ちょっとお二人さん!絵里さんのこと忘れて二人の世界に羽ばたかないでよ!!」
「ばか!!そんなんじゃねぇよ」
奥村くんはそう言うと絵里にデコピンした。
「痛~い!!章悟本気でやったでしょ!」
「ふん、お前が悪いんだろ」
「はぁ~!?」
「ふふっ」
二人があまりにもムキになって言い争っているものだから、思わず笑ってしまった。
「美雨……」
「篠原……」
二人とも何故だか驚いたような、ホッとしたような顔をして私の名前を呼んだ。
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