広有射怪鳥事

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さて広有は召使に持たせてゐた弓矢を取り寄せ、孫廂の陰に匿れて此鳥の有様をそつとみると、八月十七夜の月がよく晴れて、大空は明るいのに、御所の上だけに黒雲がかかつてゐて、其あたりでしきりに鳴き立てる。鳴く時は口から火炎を吐き出すらしく、声と同時に稲光りがして、其光が御簾の中までさし徹した。広有は此鳥の居る所をよく見とどけておいて、弓を張り、弦をしぼり、鏑矢(かぶらや)を番へて立ち向つた。
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