広有射怪鳥事

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[では上北面の侍の中に、誰れか自信のある者がないか。」とお尋ねになつた所、「二条関白左大臣殿が召かゝへてゐられる隠岐次郎左衛門広有と云ふ者ならやりとげませう。」 と申上げたので、直ぐさま広有を呼び出された。 広有は詔を承つて鈴間(一二)の辺にひかへてゐたが、此鳥が若し蚊の睫(まつげ)に巣くふといふ蟯螟(せうめい)のやうに小さくて矢も立たぬか、又は大空の外に翔り飛ぶものならば致方もないけれど、目に見える程の鳥で、矢の立つものであるならば、どんな事があつても射外しはすまいと思つたので、直ぐさま御受をした。
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