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あれから六年が経った。大学四年生の少女は次の春から大学院に行く予定だった。
就職を考えなかったのは
休業しているが少女は今でも探偵だったからだ。
助手である魔人がいつ帰ってきても少女の居場所がわかるように
事務所はそのままにしてある。
「ただいまー!」
誰もいない事務所に少女は時間が許す限り通っていた
定位置であるソファに
荷物を置き、壁に向かう。
「今日、駅前で試供品が配られてたからやってあげるね。あかねちゃん。」
今はもう動かなくなった三つ編みの美人秘書にトリートメントを。
時間が余れば
謎のありそうな未解決事件に目を通してファイリングする。
今でも月に一度
望月信用総合調査副社長の吾代に未解決事件の情報を持ってきてもらっている。
帰ってきたとき魔人が空腹を抱えていても
すぐ対応できるようにするためだ。
吾代は
「てめーがあの化け物をいくら待とうが構わねーが、てめー自身のことをいい加減考えた方がいいんじゃねーか?」
と言ってくる。
「いやだなぁ、吾代さん。ちゃんと考えていますって。今は準備期間なだけなんですよ。」
吾代は納得し難かったようだが
そう言って笑った彼女の笑顔にそれ以上の追及はできなかった。
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