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武が樹の後を付いてきた。
樹は困ったように、何度か武を振り返えったが、やはり何と話し掛ければ良いか分からず、再び前を見て歩き出す。
「…あんた、無口なのね」
そう言ったのは、仕方無く武に付いてきた瑞穂だった。
「…そうだろうか」
樹が答えた。
「あんまり無口だと失礼な奴だと思われるわよ。さっきの私みたいにね。まぁ…無口だって分かったんだから、もう気にしないでおくわ」
瑞穂が淡々と言う。
樹は無言で瑞穂を見た。
「こういう時はありがとうと言うものよ」
そう言って瑞穂は、樹をじっと睨む。
「いや、それは違う気がするぞ…」
武が突っ込みを入れた。
「冗談よ。一々、突っ込みを入れないでくれる?」
「冗談!?明らかに言わせようとしてだじゃん!」
武は尚も突っ込みを入れた。
夫婦漫才のような話を聞きながら、樹は自宅に向かって歩く。
交差点の信号を前に、樹は立ち止まった。
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