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信号は青だったが、樹の目には赤い色が映っていた。
女が立っていた。
その足下に血が滴り落ちる。
顔面は血の色に染まって赤くなっているのに引き替え、肌は血の気を失って青白い。
頭の一部が陥没していた。
《痛い…痛いよぉ…》
女の霊が呻くように呟く。
武が樹の腕を引っ張った。
「小野…もしかして、幽霊見える?」
樹は武を振り返える。
武は少し震えていた。
瑞穂も同じく震えて、蒼白になって目を伏せていた。
「…見える」
樹は肯定した。
そして、この二人も同じように見えるのだと確信していた。
「あんまり、見ない方が良いわ。とり憑かれると面倒だもの」
「体しんどいし、祓ってもらうと金掛かるしな。何かしてやれる訳でも無いし」
そう言って、苦笑する武。
「…そうなのか」
取り合えず、目を逸らそうとした。
…が、樹と女の霊の目が合った。
《…見えてるのね?》
女の霊が凄まじい速さで、此方に来る。
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