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数十分後…パトカーのサイレンが聞こえてきた。
「…来たか」
二台のパトカーが近くに止まる。
「梨花ちゃん!」
母親が出てきて、梨花を抱き締めた。
父親もそれに続く。
「何だぁ。やっぱりお前かー」
パトカーから降りてきた男が、樹を見て笑った。
刑事の築地豊だった。
「あの…君は?」
父親が樹に問う。
「自分は小野樹と言う。言っておくが、誘拐犯の一味では無い」
ぶっきらぼうに樹は言った。
「このお兄ちゃんが助けてくれたの!」
梨花が意気揚々と叫んだ。
「犯人はどうした?」
「近くの廃屋だ」
「よし。案内しろ」
樹は心底、嫌そうな顔をした。
「お前は何で、生きた人間相手には非協力的なんだ」
「梨花さん。落ち着いたら、お祖母さんの墓前にお礼を言いに行くと良い」
樹は梨花に言った。
「無視かよ!」
築地が叫ぶ。
急かすように、樹の腕を引っ張る。
「引っ張るな。築地さん」
「犯人に逃げられたら困るんだよ!」
樹はパトカーに押し込まれた。
樹は座席から振り返った。
梨花が手を振り、両親が頭を下げた。
その横で、両親よりも深々と頭を下げる梨花の祖母の姿を、樹は確かに見た。
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