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夕飯が出来た頃、ずっと部屋に籠っていた樹が出てきた。
「あ。樹くん、ご飯だよ」
「有り難いが…」
困惑したように、樹が言った。
まだ、親しくする事に抵抗が有るのかな?
「春名~!また来たわよ~」
其処に一度帰った律子がやって来た。
「り…りっちゃん。お酒臭いよ?」
律子は強かに飲んでいるようだった。
「あら!ご飯の時間?じゃあ、さっさと食べなさいよ~」
そう言って、高笑いする。
「ほら!座れ座れ!」
樹を無理矢理、椅子に座らせる。
樹は座ったまま、黙って料理を見つめていた。
「樹くん…肉じゃが嫌いだった?」
「え?…いや、そうじゃないんだ」
食べる事を躊躇っているように見えた。
「…頂きます」
空腹に負けたのか、樹は食事を始めた。
「美味しいかな?」
「あ…ああ。美味しい」
「良かった」
春名は、ほっとした。
「春名のご飯は世界一よ。野々山製菓のふんわりレモンプリンの次に美味しいわ~」
「…それだと、世界二だろう?」
樹が首を傾げた。
「あら…?そうだったかしら。兎に角、美味しいのよ~」
律子は持参したらしい缶ビールを飲む。
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