触れ合うもの

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どうしたら良いのだろう…。 春名と食事をしながら、ぼんやりそんな事を考えていた。 幽霊が見える人間など、普通は恐れるか、疑いを持って嫌厭するものだが…それとは真逆の視線は反って困惑する。 「おかわりいる?」 春名が自分に問う。 「いや。結構だ」 「駄目よ!育ち盛りなんだから、たくさん食べなきゃ!!」 春名の友人が言った。 「そんな、無理に食べさせなくても…」 春名が苦笑する。 食べ終わった食器を流し台で洗い、春名はてきぱきと後片付けを済ませていく。 食後の団欒… 自分には縁がないと思っていた。 慣れない空気に、戸惑いを覚える。 だが、部屋に戻るタイミングを、完全に逃してしまった。 「そう言えば、自己紹介がまだだったね。安立律子だよん」 春名の友人…律子が言った。 「小野…樹」 「はれ?春名と名字違うの?」 春名の名字は向坂という。 「母方の従姉だ」 「あー…なるなる」 律子が頷いた。
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