千春とお守り

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~あかーい花を咲かせましょう  一瞬それは空耳だと思った。 ~あかーいお水をくださいな  見るとそこにはやっぱり花が在って、赤く輝いている。 ~できうる限りくださいな  ごくん、その花が脈打ったような気がして、 ~あかーい色で染めましょう  血のようにヌラヌラしたその色が……幻想的で、 ~あちこちあかく染めましょう  あたしはベットから降りていて。 ~あかーい装飾身につけて  無意識だった。花に手を伸ばして、そして、 「千春! 聖ちゃんが!」  ノックもなしに母が部屋に飛び込んできた。 「聖ちゃんがね……。千春? 床に座り込んじゃって、どうしたの?」 「……あ」  なかった。  床のうえに植物なんか、どこにも。白い花も、赤い花も、存在なんかしていなかった。 「千春、聖ちゃんがね、大丈夫かしら?」 「え? 何? よくわからない」 「全身血だらけで、切り傷たらけで、救急車に運ばれていくのをご近所さんたちが見たそうなの!」
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