聖と律

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「他校の友達からもらったんだけどさ。私、それのおかげで、もう勉強が快調で快調で……」  私に対してこの話をするのは今回でもう三回目だ。以前の二回とも、いらないとはっきり言ったはずなのに。 「ごめんねー。私はそれいらない」  律から指摘された問題を直しながら言う。え、と声を漏らす律。 「でも、お守りって言ってもただの白い花なんだよ?」 「うん、いらない」 「でもでも、ただ白い花を自分の部屋に飾るだけで、勉強がスムーズになるんだよ?」 「いらないって」 「でもっ!」  律はなおも食い下がろうとする。  私は勢いよく立ち上がった。 「いらないいらないいらない!」   驚いた表情の律を睨み付ける。 「何回言ったらわかるの?」 「で、でもね」 「いらない」  それだけ言ってストンと座り、問題集とノートをのせた机に目を向ける。頭の上で律がゴニョゴニョと何か言っているけれど、無視。誰かが小さく口笛を吹いた。ぱらぱらと拍手も聞こえる。困っているのはみんな一緒なのだ。
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