聖と律

4/9
前へ
/20ページ
次へ
 はじめはそんなことなかった。むしろ律の『お守り』は評判がよかったのだ。本当に自分の部屋に飾るだけで集中力が上がり、成績がうなぎ登りに良くなっていく、と。  『お守り』が疎まれ始めたのは、律に『お守り』をあげたという他校の子が自分の部屋で白い花に埋もれて死んだ、などという噂が流れるようになってからだ。   もちろんただの噂。白い花に埋もれて死んだ、なんて言われても全く状況がわからないし、そもそも本当に律に『お守り』をあげた他校の子が死んでしまったのかもわからない。  ただ、ただこの時期の中学生にはその噂をデマとしてスルーしてしまう余裕もないわけで。    ところで、『お守り』の白い花について様々な憶測がとんでいた。中でもすごいのが『女の子の思念説』。  ありがちなんだけど、色白病弱美人で秀才な女の子がいて、自分で自分の病気を治すため医者を目指していたんだとか。  女の子の夢は元気になって踊りを踊ること。でも、志半ばにして大量の血を吐いて死んでしまう。  女の子の強い思念が白い花に乗り移ったんだとか。白い花は持ち主を医者にさせるため勉強をはかどらせるけれども、同時に吐血して失った自分の血を取り戻そうともしている、らしい。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加