聖と律

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「お前らなぁ、ホームルームの時くらいは休んでもいいんだぞ」  冗談めかした口調で担任が言った。  担任が教室に入って来たことに気が付かなかった。私は自分の集中っぷりに少し満足しながら顔をあげる。  まだ律が私の机の前に立っていた。 「ほら、律、席につけ」  ポカンてしている私をじっと見下ろす律。担任の言葉は届いていないようだ。  律が私の机を強く叩く。驚いた私は椅子ごと後ろに下がる。 「なんで?」  切羽詰まった律の声。 「なんで? だってだってただの花じゃん」  席に戻りなさいと担任が命令口調で言う。でも、律には届かない。 「ただの花だよ? そうだよあんなのただの花じゃん!」  律、席つきなよと千春が声をかける。  千春と律は同じ元バスケ部だ。そのせいか、千春は律から毎日のように『お守り』の話をされていて、そのたび丁寧に断っている。 「私……私は、あんな花なんか、たかだか花なんか怖くないっ!」  叫ぶように言うと、律は担任の制止も聞かずに教室を飛び出して行った。 「律!」  それを追って千春も席を立ち走りだす。 「待ちなさい」  私は担任の言葉を背中で聞いていた。  自分でもよくわからないままに、私も律を追っていたのだ。
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