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心臓がバクバクいっている。ああ、私、一体何してるんだ?
走りながらふと、廊下を走るのはいつ振りだろうかと思った。この三年間でどれほどの思い出をつくることができたのだろうか、とも。
三人の走る音が廊下に響く。空教室をいくつも通り過ぎた。いくつも、いくつも。クラスからはどんどん離れていく。
「ま、待ってぇ」
情けない声が出た。
さすがに元文化部の私が元運動部の二人を追いかけるのは無理がある。ぐんぐんと引き離されていく。
それでも必死についていこうと息苦しいのをぐっと堪えて、堪えて、堪え……。
「も、無理」
私は立ち止まった。頭の血管が激しく脈打つ。思わずへたりこんでしまった。
――うん、まぁちょっと考えればこうなるのわかるよね……。
考えず駆け出してしまった自分が憎い。
すでに二人の姿はなかった。
「こっちの方は体育館しかないような……」
追っかけて体育館に行くか? いや、もう教室に戻った方がいいかも。そもそも私、なんであの二人を追いかけたんだ?
何はともあれ、立ち上がる。閉め切った窓の向こう側には、青空が広がっている。
「律、大丈夫かな」
律があんなに『お守り』にこだわりだしたのは他校の子の異常な死の噂が流行りだしてから。
まさかあの噂が本当のこととも思えないが、律の周辺で何かあったのは確かだろう。
それにしても、今日は本当にいい天気だ……。
ガターン
音がした。
たぶん体育館の方から。
続いて悲鳴が。
これは千春の声だ。
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