屋上~1

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病室の中には誰もいなかった。 もう一度、部屋番号を確認したが間違っていたかった。 騙された? いやまさか、売店のおばちゃんが僕を騙しても、なんの得もないもんな。 また人に聞くのも恥ずかしいので、僕はフラフラと歩き回る事にした。 休憩室、 自販機置場、 ロビー、 食堂… 歩き回るうちに、僕の探している人物がすり替っているのに気が付いた。 オレ、あの子を探してる… 僕はいつの間にか、大野の姉貴ではなく瀬田 雅を探していた。 そして気が付くと、煙草を片手に屋上まで来ていた。 屋上に誰もいない事を確認すると、手にしていた煙草を口にくわえ、火をつけた。 「オレ、何しに来てんだろ?」 独り言がこぼれる。 「つぅか、あの子に会ってどうするつもりなんだろ…」 自分の無計画さにため息が出た。 「帰っかなぁ…」 そうだ、会ってもしょうがない。気まずいだけだ。なら、会わずに帰りゃぁいい。 階段に向き直り、歩き出そうとした、その時! 「こらぁ!その手に持ってるのはなんだ!」 一瞬で嫌な汗が滲んできた。 (ヤバい!バレた…) ビビリながら声の方を向くと… そこに立っていたのは髪の長いかわいい女の子だった。 瀬田 雅だった。 彼女は心臓に悪いと思った…
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