屋上~2

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「煙草、おいし?」 突然、隣から声が聞こえる。 「え?な、なに?」 考え事をしていた僕は、いきなりの事に驚き、聞き返した。 「…煙草はおいしいのかい?」 不機嫌な顔をした彼女は、こっちを向く事なく同じ質問をしてきた。 「あ、ま、まぁうまい…のかな?」 確かに味なんて関係なかった。 僕らの年代なんて、煙草を吸うという行為がかっこいいと思って吸ってる。そんなヤツが大半だろう。 僕だってそうだった。 「ふぅん…」 …会話は終わった。 (なにが聞きたかったんだぁ?) 僕は、隣にいる女の子とのやりとりに頭を抱えたくなった。 この子が何を考えてるのかわからない… 僕は、思い浮かんだ事を口にしてみる事にした。 「キミ、ここに入院してんの?」 どうしてこんな事を聞いたのか、自分でもわからなかった。 入院してるのは知ってるはずだ。 さっき病室にも行ったじゃねぇか。 それでも、僕の口からは質問が出ていた。 僕は、心のどこかで彼女から直接聞きたかったのかもしれない。 いや、もしかしたら否定してほしかったのか… 「あのね…」 彼女が口を開いた。 心臓の音が早くなるのに気付いた。 私、もう長くないの… そんな言葉が浮かぶ。 (いやだ…) どうしてだろう。 (イヤだ…) 彼女の事、何も知らないのに。 (嫌だ…) この前知り合ったばかりなのに。 (いやだイヤだ嫌だ!) 僕は泣きだしそうになっていた…
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