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「お~い、孝秋ぃ」
僕は呼ばれた方を振り返った。
「友成!遅ぇぞ。」
声の主は別に急ぐ訳でもなく、こっちに向かっていた。
今日は、幼なじみの加藤 友成に誘われて、大きな街まで遊びにきていた。
とは言っても、それは友成の口実で、本当はこいつが彼女とデートしたいだけだった。
「ゴメンね、遠山クン。」
そう言って謝ったのが友成の彼女で、クラスメートの大野 知花だった。
「あぁ、いいって。後でトモにおごらせるから。」
この二人が大っぴらにデートできないのには、理由があった。
友成の家と大野の家は、じぃさん達の代から仲が悪く、二人の親同士もいつも喧嘩しているのだった。
小学の時にも、大野の親が「同じ学校になんて行かせたくない」と言って、別の小学校に入学させるほどだった。
しかし、そんな親達をよそに、子供達は中学に入ってすぐに、互いに一目惚れして付き合ってしまった。
このバカップルは、自分達を「ロミオとジュリエット」のようだと思ってるらしく、こうやって僕の名前を利用し、デートしているのだった。
二人のデート中、僕は適当に時間を潰して、帰る時にまた友成と落ち合うのだ。
「ロミジュリなんて、結局死んで終わりじゃねぇか…」
気が付くと僕はそう呟いていた。
「ん?なんか言ったか?」友成がすぐに聞き返してきた。
「なんでもねぇよ、じゃぁ4時に駅でな。」
そう言って、いつものように時間を潰しに行こうとした。
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