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「笑顔を見た事ねぇ?何回もデートしててか?」
「…うん。」
「おもしろい話とかして、笑ったりしないの?」
「あいつ、基本的に気持ち表に出さねぇし、笑ってもなんか引っ掛かってんだよ…」
雅はいつも、どこか遠くを見ていた。
きっと、僕の知らない事を抱えているのかもしれない。
大野のように幸せそうに笑わないのは、僕といてもそんな気持ちにならないからだろう…
「お、おい!暗いぞ!?…そうだ!こんな作戦はどうだ?」
友成はそう言うと、マイナス思考にどっぷりハマっていた僕に耳打ちをした。
「はぁぁ?」
友成の作戦に不満がる僕だったが、自分ではいい考えも浮かばず、仕方なくのる事にした。
僕は、帰り際の二人を呼び止めると大切な話をした。
「雅の事は、誰にも言うなよ?お前ら以外には絶対に知られたくねぇんだ。オレが好きなのは今まで通り、今野って事でよろしく。」
二人には嘘の噂を流してもらっていた。
中学生という年代は、人の恋愛話が大好きなものだ。
そしてありもしない噂が流れ、当人達が苦しめられる。
それを心配した僕は、自分から嘘の噂を流してもらっていた。
僕は、沢山のクラスメート達より、知り合って間もない一人の女の子を選んだのだった…
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