橙色~プロローグ(第一部)

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だけどそれがよかったのか、彼女は小さく笑った。 そして、 「雅、瀬田 雅。」 そう言った。 雅…初めて聞く名前だ。 どうゆう字で書くんだろう? またボーッと考えていると、瀬田 雅は一人で歩き出していた。 「あっ!待って、ねぇって!」 僕は我に返り、彼女の後を歩き出した。 しばらく二人で歩いていたけれど、名前を聞いて以来、彼女はまた黙りこんでいた。 (大野の姉貴に頼まれたって言ってたよな?じゃぁ年上か?…には見えねぇよなぁ。姉貴は確か看護士だったから…病院の知り合いかなんかかな?) 歩きながら僕は彼女がナニモノなのかを考えていた。 すると、気付かないうちに瀬田 雅は、大きなビルの前に立って何かを睨んでいた。 僕は少し戻り、彼女の目線を追うとそこには、 「あぁ、この絵か。」 そこにあったのは、何度か見た事のある誰が描いたかは知らないけど、結構立派な油絵のポスターだった。 「綺麗な夕焼けの絵だよね。」 僕はそのポスターをじっと見る彼女にそう話かけた。 すると、今まで何も言わなかった彼女が僕の方に向き直った。 「孝秋はこれが夕焼けに見えるの?」 瀬田 雅は僕にそう尋ねた。
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