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だけどそれがよかったのか、彼女は小さく笑った。
そして、
「雅、瀬田 雅。」
そう言った。
雅…初めて聞く名前だ。
どうゆう字で書くんだろう?
またボーッと考えていると、瀬田 雅は一人で歩き出していた。
「あっ!待って、ねぇって!」
僕は我に返り、彼女の後を歩き出した。
しばらく二人で歩いていたけれど、名前を聞いて以来、彼女はまた黙りこんでいた。
(大野の姉貴に頼まれたって言ってたよな?じゃぁ年上か?…には見えねぇよなぁ。姉貴は確か看護士だったから…病院の知り合いかなんかかな?)
歩きながら僕は彼女がナニモノなのかを考えていた。
すると、気付かないうちに瀬田 雅は、大きなビルの前に立って何かを睨んでいた。
僕は少し戻り、彼女の目線を追うとそこには、
「あぁ、この絵か。」
そこにあったのは、何度か見た事のある誰が描いたかは知らないけど、結構立派な油絵のポスターだった。
「綺麗な夕焼けの絵だよね。」
僕はそのポスターをじっと見る彼女にそう話かけた。
すると、今まで何も言わなかった彼女が僕の方に向き直った。
「孝秋はこれが夕焼けに見えるの?」
瀬田 雅は僕にそう尋ねた。
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