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「私は朝焼けに見えたの。」
さっきまで黙っていた彼女は急に立ち止まり、そう言った。
初めはなんの事を言っているのか解らなかったけど、やがてビルの前で見たポスターの事だと気が付いた。
「朝焼け?朝焼けってあんな風なの?」
寝る事が大好きな僕は、早起きはもちろん、朝焼けを見た事なんて一度も無かった。
「昔、おばぁさんと見た事があったの。燃えるように昇っていく朝日…」
彼女は「どこか」を見ながらそう言った。
「周りの人もみんな、あの絵を見て夕焼けだって言ったの。だけど孝秋だけだよ、「終わり」じゃなくて「明日の為に沈んでく」って言ったの。」
彼女は、僕らが出会ってから今までで一番長く話すと、優しく笑った。
この時、僕は彼女に一目惚れした。
いや、正確には二目惚れしたんだ…
彼女はとても綺麗だった。
確かに顔もかわいいけれど、この時見た彼女の眼は、淡く輝いていて、とてもとても綺麗だった…
僕達はそれから色んな話をした。
学校の事、家族の事、友達の事。だけど話すのは僕ばかりで彼女は興味深気に聞いているだけだった。それでも僕は楽しかった。
こんなかわいい子と一緒にいれるの事が嬉しくて仕方なかった。
そんな時間は僕の一言で終わりを迎えた。
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